親を想う子の心

僕の知り合いに、松阪で若い頃から化粧品店を経営された方がいらっしゃいます。
まだ七十代なかばですが、物忘れなど認知症の症状が出現しており、お店は閉店状態が続いています。
彼の中では、それでもまだお店を続けているという思いも、まだ半分はあるんです。

彼の息子さんは、大手企業のエリートコース、とってもやさしい息子さんですが、後を継いで店を続ける可能性は、もうありません。

先日、息子さんが手配して、化粧品メーカーからお店の商品の回収が行われました。
自分が今まで全てを捧げてきた店から、もう販売する商品がなくなるんです。
もっとも、もうだいぶ前から商品が売れる事はなかったでしょうが・・・

息子さんも悩まれたと思います。
でも、いつかは通らなきゃならない道・・商品の撤去。

翌日、ご本人にお会いしましたが、虚ろな目に涙をためて、その事を話されていました。
僕も泣きそうになった。
彼がその人生を賭けて、守り育ててきた「店」という大きな支えを失うんだもん。
かわいそうで・・・。007.gif どう慰めたらいいのか若輩者の僕にはわからない。



僕は、ずいぶん前に60代で他界した自分の父を、それに重ねた。
我が家は、専業農家で父はイチゴ栽培に全てを捧げていた。
生き物を生活の糧にする。
手を抜けば、すぐにダメになる、手をかけてもダメになる時がある。
生き物ですから・・・

そんな彼が喉頭癌の宣告を受け、手術。
その後もイチゴ後栽培を続けて来たが、2年後に再発。
もうどうしようもない。

手術の影響で動かない右肩と痛みを押して、彼は来年のイチゴ苗の準備をすると言った。
来年、イチゴ栽培を続けられる可能性は、限りなくゼロに近いのに・・・。
僕は母に、「させてやろう」って言った。
イチゴを来年もやるって気持ちが支えになると思ったから・・・

父がなくなった後、僕はその事をとっても後悔したんだ。
その苗の準備作業をしている父の辛そうな顔を忘れられないから。
その後、調子を大きく崩して、「もうできないんだ」って自分で認識する事になったから。

させなければ良かった。 残酷だったって。
「来年はやめよう」と、辛くても言えばよかったって。



今回、お父さんの化粧品店を撤去する決断をされた息子さん。
父を思って辛い決断だったことでしょう。
寂しそうなお父さん顔・涙。
それは目を覆いたくのなるほどの表情です。
大きな支えを失ったご本人に認知症は大きな影響を及ぼすでしょう。

私の父の場合。 知り合いの彼の場合。
その息子がとった決断は逆です。

そして、どちらも辛い思いをする。
そう・・進むもやめるも同じくらい辛く、同じくらい影響が大きいんだなって・・

だから僕も、もう父のことでの後悔はやめよう。
そして化粧品店を閉めた彼の新しい生きがい作りに全力で取り組もう。045.gif
亡くなってしまってしてあげられない、父への気持ちも乗せて・・・。072.gif

古儀泰司
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by yasu121928 | 2011-07-14 13:05 | 仕事系 | Comments(0)
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